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雪降って地固まる

Dota 2に関する内容を中心に扱います

翻訳: StarLadder Season 3におけるLiquidのDraftの分析

翻訳記事 Dota 2 Competitive

原文(英語): Drowning in Liquid’s Data – Champions of Starladder I-Leauge StarSeries S3 / Reddit post
この記事は、原文著者の許可を得て翻訳し、公開しています。


機械学習と大学で学んだデータ分析の手法にもとづき、プロチームのドラフトパターンを分析する記事の第三弾です。 今回はSL i-league 3で大成功を収めたLiquidのドラフトについて分析したいと思います。

データをそのまま分析しようとすれば、法則性を見つけることが非常に難しいものでした。 Liquidは11試合を通じて、最大で55の考えられるヒーローの内、32ヒーローをPickしました(内19ヒーローは1試合のみ、8ヒーローは2試合のみ)。 Liquidが3回以上Pickしたヒーローが5種類だけだったので、データの中から共通するペアを見つけ出すことに依存している、私のお気に入りのアプリオリ アルゴリズムで分析することは難しいものでした。 しかしながら、それでもLiquidのドラフトについて十分な情報を得ることができたので、これから紹介したいと思います。

StarladderでLiquidがプレイしたすべてのヒーロー

まずデータを見て、Liquidの弱点と思われる部分に気が付がつきました。 それは、2人以上のプレイヤーにプレイされたヒーローは、3ヒーローしか存在なかったということです(そしてはっきりと言ってしまえば、"Rubickは両方のサポートプレイヤーによってプレイされている"という点は決して特筆すべきことではないのです)。 以前、TI6のDCのドラフトの分析を行ったとき、驚かされたのが、DCが多くのヒーローを交代してプレイできたいうことです。 そのことがDCのドラフトに多義性をもたらし、敵がレーン構成とゲームの展開を予測することを困難にしました(Support Nagaの試合を覚えていますか?)。

EGと似て、Liquidは集団戦重視のOfflanerを選ぶ傾向にありますが、サポートについて言えば、EGよりも機動性の高いヒーローを選ぶ傾向にあります。 以前にEGのデータを分析した時、ZaiがRoamingしSuma1lとUniverseを助ける一方、Cr1tはLane supportをプレイする傾向にありました。 一方Liquidは、両サポートがわずかに攻撃的であると同時に、必要とあれば惜しまずにMatumbamanをサポートします。

LiquidのCarryは誰?

同様に、EGとの類似性について、誰がPosition 1なのかという疑問があります。平均GPMに基づくと、Miracle-がPosition 1ということになりますが、平均は平均なので、どちらのプレイヤーがFarmを優先的に行ったを数えてみることにします。

プレイヤー 平均GPM
Miracle- 628
Matumbaman 603
MinD_ContRoL 435
GH 371
Kuroky 347

ヒーローのPickと平均を踏まえれば、Miracle-がMatumbamanよりもFarmの優先順位が高い傾向にあることは驚くべきことではありません。 MatumbamanがMiracle-よりFarmの優先順位が高かった試合は半分程度なのにもかかわらず、どうして平均GPM差が20しかないのでしょうか?

Miracle- Matumbaman
6 3
1* 1

*: この試合では、Miracle-とMatumbamanのGPM差は1だけだった

LiquidのStarladderにおける上位5GPMを見てみると、Miracle-が1位を記録したものの、残り4つをMatumbamanが占めています(5位と6位以降の記録の間には大きな開きがあります)。

プレイヤー GPM
Miracle- 868
Matumbaman 803
Matumbaman 744
Matumbaman 711
Matumbaman 700

上位5GPM記録

いずれにしても、他に試合に影響を与える要素が多くあるので、GPMのことばかり気にかける人はいないでしょうから、ただの数字としておいておき、GPMの話はここで終わりにしましょう。

チームのピーク

試合時間で5分毎(端数切り捨て)に区切った、Liquidの勝敗

なんということでしょう、40分以下の試合では全て勝利している一方で、45分を超えた試合ですべて負けています。どうやら、Liquidは30-35分のあたりにピークがあるようです。 Liquidはこのことを理解しているので、40分以内に勝利することを目的としたドラフトを行っているのです。

Liquidは大会最初の試合でNaga+MiranaをPosition1/2としてPickして負けた後、これらのヒーローを選ぶことはありませんでした。 Liquidが負けたもう1つの試合は、OD/Timber/Brewmasterの3-core構成で、VG.JのLifestealer/Sniper/Centaurの3-coreに対してlateゲームを制することが出来ませんでした。 前述の通り、MatumbamanとMiracleは2つのsemi-carryを選ぶ傾向にあり、MatumbamanがMorphlingをプレイするとき、Miracle-はmid-game重視のmid Ember Spiritをプレイします。 同様に、Miracle-がSniperをプレイするときには、Matumbaman/MinD_ContRoLの、Lifestealer/Centaurの能動的な前線のヒーローの組み合わせを必要とします(んー、VG.Jはどこからこのアイデアを得たのでしょうか🤔)。

トレードオフ

トレードオフは高校時代の経済学の先生のお気に入りの言葉で、これからこの組み合わせを論じるときに、いっぱい使うつもりです。 Starladderを通して一般的であったLifestealer+Sniper+Centaurの組み合わせには、たくさんの意味があります。

Centaur+Lifestealerは、Infest bomb、高ダメージ、タワーPush能力、そして強力な時間帯が近いことから、非常に強力なMid-gameの組み合わせとして、頻繁に同時にPickされました。 どちらのヒーローも非常に固く、それが “6.83の悪夢” SniperをPickすることを可能にします。

次のベン図は、Starladder LAN finalsにおける3ヒーローの関係性を示しています。

CentaurがSniperと共にPickされなかった試合の1つでは、まずWingsがSniperをPickしたものの、すぐにLiquidがコンボを阻止するためにCentaurをPickしました。 すでにもう1人のSniperであるDruid(ほとんどの試合でBanされる)をPickしていたLiquidにとって、このことはとても良く作用しました。

更に詳しく調べてみると、Bounty HunterもまたSniper+Centaurの全ての試合で選ばれていることが明らかになりました。 これはおそらく2ヒーロー(とそれを含むチーム)の集団戦での存在が、Track goldから十分に恩恵を受けられ、そのままSnowballして勝利できるからでしょう。 Bounty HunterをPickするのが難しい場合*1、Lifestealerは良い妥協案となります。Rageに加えてInfest bombで集団戦での存在感を十分確保でき、FeastとOpen Woundの回復により集団戦後Pushできます。 Armlet, Sabre, Desolatorがあれば更に簡単な話です。

そして、SniperはLone DruidがBanされたとき(つまりほぼ常に)優れたトレードオフとなります。 Talentが追加され、より良いSniperとなったLone Druidは、誰もプレイしたくないSniper(Pajkatt *2 にとっては話が異なるかもしれませんが)の良いトレードオフとなります。CentaurがPickされた試合は後10試合あるので、残りについても見ていきましょう。

驚くことに、Druidはたった3回しかCentaurと共にPickされておらず、残り4試合では前述のパターンに全く当てはまらず、Lifestealerとともに選ばれることは決してありませんでした。 MatumbamanのPickをDotabuffで見てみると、DruidとLifestealerはどちらもレーンでサポートを必要とし、Druidは熊でタワーをPushすることができるからだという風に思われます。 4試合ではCentaurが選ばれませんでしたが、TidehunterやSlardarといったCentaurとよく似たTankyなイニシエーターが選ばれていました。

Liquidに特化した内容ではないので話題を変えたいですが、Druid/Lifestealer/Sniperが選ばれずCentaurが選ばれた7試合のうち4試合ではWeaverが選ばれていました。 #DesolatorIsAGoodItem

第一フェーズ

実際のPickパターンはそれほど多くないものの、多くのチームがLiquidに対して最初のPick phaseを行うか、いくつかの事実があり、Liquidが本当に嫌っているヒーローがあります。 11試合の内8試合でLiquidでNyxをBanしました(その全てが第一フェーズに行われたものです)。

まずNyx Assasinの勝率を見てみると、Starladderにおいて5回選ばれ、4勝しています。 Nyxが負けた唯一の試合は、TNC vs OG(34分) で、他の4試合は37分~78分とLiquidが苦手とする時間帯と一致します。 LiquidはNyxを相手にしたくないだけでなく、実際にPickすらしていないのです。 NyxがLiquidに対してBanされたことは一度もありませんでした。 Liquidに対してNyxが選ばれたのは、Liquidの大会初戦の1試合のみで(その試合はLiquidが負けた)、これがLiquidがNyxを嫌っている理由かも知れません。

一般的に、Pickそのものよりも、そのチームに対するBanの方がそのチームの特性を表す傾向にあります。 例えば、Liquidは2回以上Pickしたヒーローが5種類しかないというとても大胆なものですが、第一フェーズに限ると、Liquidに対して行われたBanは4ヒーローしか存在しなかった一方、Liquidは10種類のヒーローをBanしました。 このことはLiquidがNyxを嫌い、Banし続けたかをはっきりと示しています。Liquidは、Nyxを2回Pickし1勝1敗だったTNCを除く、全てのチームに対しNyxをBanしました。

第一フェーズでLiquidがBanしたヒーロー

その逆、Liquidに対して第一フェーズで行われたBanは次のようになっています。

最後に、アプリオリ アルゴリズムで分かったもう1つの事実があります。 LiquidがStorm Spiritを相手にした全ての試合で、Rubickが選ばれていました。 Storm Spiritのダメージの大部分はMagic damageなので、RubickのNull Fieldによる魔法耐性は、Storm Spiritを相手にする上でとても便利なものです。 しかし、本当の理由はTelekinesisの即時Stunで、StormがBall Lightningで逃げるのを防ぐことができるからかもしれません。 また、Rubickは十分なMidへのGankポテンシャルを持っています。

小さな大会で多くのチームがとてつもなく大きなヒーロープールを持っているとき、その弱点は顕著なものになります。 この記事でLiquidが彼らの得意とする、攻撃的で、早期Pushを重視し、集団戦重視のOfflanerを選ぶというDotaのプレイスタイルがあり、4人の9kプレイヤーがいるということを示せたと思っています。 試合ごとにPickするヒーローが異なっていても、mid-game重視のCarry、Tankyで集団戦重視のOfflaner、十分なダメージを持つRoaming重視のサポートという点は、大会を通じて一貫しています。 ここに来てようやく、たくさんのトレードオフが存在し、わずかな違いが多くの差を生むDotaにおいて、ヒーローの名前だけを見てデータを分析するのは単純すぎるということに気が付きました。

とはいっても、私はチーム専属のデータアナリストではないので、自分の持つ時間では表面をなぞることしかできません😀。Dotaは単なるドラフトだけでなく、たくさんの要素が存在するゲームだということを忘れないでください。

*1:訳注: Sniper+CentaurがPickされた3試合中、Bounty Hunterが選ばれなかった唯一の試合では、敵がSlardarをFirst pickしている

*2:訳注: SniperはPajkattのSignature heroとして知られている。また、TI1でDota 2初のRampageをSniperで手にしたプレイヤーである